Double and Multiple Stars and How to Observe Them

(二重星と多重星及びその観察方法)by James Mullaneyの概要紹介

                      2014年5月 舟越 和己

 日本には二重星の本は全くありませんが、この本は二重星の分類と理論から始まり二重星観測の

基本的なことが網羅されていて、観測の入門書(二重星の観測を始める前の知識)として非常に良い

本です。

 この本は、「第一部 二重星と多重星の全て」、「第二部 二重星と多重星の観測」の2部構成です。

第一部は

  1. Introduction(序論)

  2. Type of Double Stars(二重星のタイプ)

  3. Astrophysics of Double Stars(二重星の天体物理)

第二部は

  4. Observing Techniques(観測技術)

  5. Tools of the Trade(商売道具)

  6. Observing Projects(観測プロジェクト)

  7. Double and Multiple Star Observing Lists(二重星と多重星の観測リスト)

  8. Conclusion(結論)

となっています。

第1章 序論

この章は下記の項目から構成されます;
・”二重星”の愉しみ→「二重星の変化に富んだ色や明るさ、離角、コンポーネントの構成は、望遠鏡

での天体の散策の楽しめる対称として魅力的であり、”天井の牧草地の花(ロングフェロー)”の眺めで

ある。」など二重星を見る愉しみについて述べられています。

・二重星と多重星→これらの定義が述べられています。
・天文学の重要な分野の消滅→かつては盛んだった二重星天文学の衰退と今日のアマチュア天文家

による二重星観測への関心の再生が述べられています。

第2章 二重星のタイプ

この章では下記の項目により二重星の多様性を調べます。様々なタイプの二重星について基本的な

ことを知ることができます。
・「光学的」対「物理的」二重星 

・共通固有運動(CPM)のペア

・実視連星

・インターフェロメトリック連星

・アストロメトリック(位置天文的)連星

・分光連星

・食連星

・多重星系

・激変型連星

第3章 二重星の天体物理

天体物理の視点から見た二重星の下記の特徴についてその基本的知識を学ぶことができます。

・二重星の頻度と分布
・二重星の起源

・星の質量の決定

・二重星の距離

・二重星と質量-光度の関係

・接触連星の質量の交換

・星の併合

・2分間の連星?

・惑星系

第4章 観測技術

 ここでは観測時の注意事項(目のトレーニング、空の条件、スターテストとコリメーション、記録すること

など)がいろいろ書いてあります。

・眼のトレーニング→像の詳細を見たり分解したりする能力である、視力の訓練、そらし(又は脇)目を

使用するテクニック、プルキンエ効果(Purkinje effect)、暗順応(dark adaption)など

・空の条件

・スターテストとコリメーション

 

第5章 商売道具

 ここには二重星観測に必要な下記の道具の説明が書かれています(望遠鏡の基本的なことから

マイクロメータとその使い方まで)

・屈折望遠鏡

・反射望遠鏡

・カタディオプトリック望遠鏡

・アイピース

・スター・ダイアゴナル

・バーローレンズ

・マイクロメータ→ここでは、伝統的なファイラーマイクロメータや、もっと簡単なレチクル・アイピース・

マイクロメータの説明が載っています。

・写真、ビデオ、及びCCD画像システム

・星図とカタログ

・その他のアイテム→双眼アイピース、露/光シールド、ヒーター付きアイピース、写真家の布、

アパーチャーマスク、目盛り環(Setting Circles)/Go-To及びGPSシステム、マウンティングと

モータードライブ、コンピュータ、観測所

第6章 観測プロジェクト

  この章では、二重星愛好家のための7つの観測プロジェクトを調べます。7つのプロジェクトとは

下記の7つです;

1.名所巡りのツアー

2.色の研究

3.分解能の研究

4.マイクロメータ測定

5.軌道計算と描画

6.新しいペアの調査

7.二重星観測者のソサイエティを設立すること

第7章 二重星と多重星の観測リスト

 この章では、2つある二重星と多重星の観測リストの最初の方を示します。これは2インチから14インチ

の口径の望遠鏡で眺めるための100個の極上の対象を編集したものです。

第8章 結論

 ここは結びの言葉として下記の項目が述べられています。

・観測の報告と共有

・楽しみか真剣な観測か

・審美的および哲学的考察→ここでは、過去、現在のアマチュアおよびプロの偉大な観測家の考え

を抜粋したものが記述されています。そのいくつかを紹介すると、

「天体物理学を忘れ、単純にその光景を楽しみなさい。」−Walter Scott Houston

「私は天上の事実を学ぶのではなく、その荘厳さを感じるために天文学者になりました。」−David Levy

「私が観測するから私が存在する(I am because I observe)。」−Thaddeus Banachiewicz

「望遠鏡の真の価値はどのくらい多くの人がそれを通して天上を眺めたかということである。」−John Dobson

「望遠鏡はあなたの人生を変えることができる機械である。」−Richard Berry

                                            以上